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山口家庭裁判所 昭和49年(家)236号 審判 1974年5月08日

申立人 佐藤誠(仮名)

事件本人 佐藤英夫(仮名)

主文

申立人の本件申立を却下する。

(申立人が法律上当然に上記事件本人の保護義務者となる。)

理由

一  本件記録添付の戸籍謄本及び医師貞国燿作成の診断書によれば、事件本人(大正一〇年八月二八日生まれ)は精神分裂病者であることが認められる。

二  ところで、上記戸籍謄本及び調査官の調査報告書によれば、事件本人には妻がなく、後見人の選任もないうえ、事件本人の法定の扶養義務者としては、実父である申立人が唯一人現存するものであることが認められる。

このように保護義務者として扶養義務者が申立人一人である場合は、精神衛生法二〇条一項ないし三項の解釈上、申立人が法律上当然に保護義務者となり、特に家庭裁判所の選任を要しないものというべきである。

なお本件においては、申立人が老人ホームに入所していて十分に義務の遂行ができるかどうか問題がなくはないが、もし適切に義務の遂行ができないときは、同法二一条の定めにより、管轄市町村長が保護義務者になるものと解される。

三  よつて本件申立を不適法と認めて却下する(なお本件関係者に対し上記二の趣旨を明確にするため、申立人が法律上当然に保護義務者となるものである旨主文において注記する)こととし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 小湊亥之助)

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